広島交響楽団チェロ奏者

2000年3月
広島大学教育学部教科教育学科音楽教育学専修チェロ専攻卒業

3歳よりピアノ、11歳よりチェロを始める。広島大学教育学部教科教育学科音楽教育学専修チェロ専攻卒業。卒業前にヤマハ音楽教室チェロ講師の資格を取得し講師活動を始める。2005年1月広島交響楽団に入団。2007年日本演奏連盟新人演奏会で広島交響楽団と共演。2012年朗読とチェロのユニット「音楽文庫」を結成。山口県の図書館、学校などで公演し、オリジナルCDを作成。2019年広響メンバーによる「ベリル弦楽四重奏団」を結成。その他にインスタレーションとチェロ即興のイベント「オトコトトカタ」など、演奏活動や後進の指導を行っている。これまでに故田中美光、秋津智承、ピーター・バラン、マーティン・スタンツェライトの各氏に師事。2006年「ミュージックキャンプ・プラハ」に参加。カレル・フィアラ、ミハル・カニュカの各氏に師事。

小学生の頃、周りの人にピアノの演奏を聴いてもらえることが楽しくて、いつからか音楽大学に憧れるようになりました。小学6年生になる前に、両親が趣味の吹奏楽でお世話になっていた先生がチェロの先生だったこと、通っていたピアノ教室でレッスンをされていたこと、私の音楽への憧れが大きくなっていたことなどの条件が重なって、チェロを習い始めることになりました。ここでは、発表会がオーケストラとチェロアンサンブルで行われており、私のアンサンブルの原点はここにあります。アンサンブルが楽しくて益々音楽の道に憧れるようになりました。
高校生になり進路を決めるころになると、両親から音楽大学への進学は反対されたのですが、広島大学でチェロのレッスンやオーケストラの授業があることが分かり、私はここでなんとかチェロを続けていきたいと思い、必死に受験の準備をして合格し入学することができました。

入学後は、音楽棟の練習室が充実していたので、1年の時には朝早く音楽棟に行き、1コマ目の一般教養の授業の前に練習をして授業を受けに行くことを日課にしていました。練習後に授業がある教室に行くために緑豊かなキャンパスを5分くらい歩くのですが、春などは風が吹くと爽やかで、気分転換になって気持ちが良かったことを覚えています。
学年が進むと実技の授業が増えてきます。チェロ、ピアノ、声楽のレッスン、オーケストラ、弦楽合奏、合唱、指揮法、ソルフェージュ、音楽学、民族音楽などの授業があり、授業外ではピアノ三重奏や弦楽四重奏のレッスンもしていただきました。その他に私の在学中には、作曲家の久留智之先生の特別授業で現代曲を演奏する機会や、広島大学50周年事業のプッチーニ作曲オペラ「蝶々夫人」公演で演奏する機会もありました。ここでのレッスンや授業で経験し学んだことは、広島交響楽団をはじめ、様々な演奏機会において必要な知識の下地になっています。

入学の目的であったチェロのレッスンでは、入学後に基礎からレッスンしていただき、4年間でスケール、エチュード、無伴奏、ピアノとのアンサンブルなど、内容がとても深いレッスンを受けることができました。当時使っていた楽譜には、先生から教わったことの書き込み、自分で調べたことや感じたことを色にしたり、図に描いたり、たくさん書き込みがあります。そして他の学生のレッスン聴講もできました。最初は自分の演奏に参考になると思って聴講していたのですが、チェロを初めて持つ副科の学生のレッスンを見て、先生に指導法について質問できたことは、さらに自分のためになり、聴講しておいて本当に良かったと思います。なぜなら実際にレッスンするようになった時、楽器の初めの一歩を教えることがどんなに難しいことか分かったからです。現在私がレッスンをする上で助けとなっています。

卒業後は、ヤマハ音楽教室で講師をしながら、コンクールや新人演奏会のオーディションに挑戦することで演奏の勉強を続けました。そのように過ごしているうちに広島交響楽団のオーディションを受ける機会が巡ってきました。そして受験。合格をいただき入団することができました。
広島交響楽団では、国内外から名だたる指揮者、ソリストが来られて共演する日々で、その方々や団員の方がどのように考え演奏をされているのかを知ることができ、毎回の公演で刺激を受けています。また広響チェロパートは、ホームパーティやチェロアンサンブルのコンサートを企画するほど結束が強く、お互いを尊重しあう愛情が溢れたパートです。私はチェロパートの一員であることに幸せを感じます。さかのぼれば高校で進路を決める時、チェロを続けることを諦めなくて良かったと心から思います。

オーケストラ以外の活動では、室内楽やソロで演奏する機会にも恵まれ、レッスンではたくさんの方と出会うことができました。そのたくさんの出会いの中で誕生した、私の演奏活動で代表となる活動があります。それは朗読とチェロによるユニット「音楽文庫」の活動です。日本文学の朗読にチェロ独奏を添えて公演します。結成のきっかけは、山口県周南市で図書館館長をされていた生徒さんからの依頼です。図書館で宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」を朗読とチェロの独奏で公演しませんかということから始まりました。楽曲の著作権を考えるとオリジナルで作った方が今後も演奏しやすいと考え、「音楽文庫」ではオリジナル曲で演奏します。「セロ弾きのゴーシュ」は、「インドの虎狩り」「何とかラプソディ」など宮沢賢治が考えた題名の音楽や朗読の合間や背景に音楽を流せるシーンがいっぱいで、大人も子供も楽しめる作品です。図書館での初演後、学校での公演も実現しました。学校公演では事前に来校し、代表の子供たちが朗読の動きに合わせて動いたり、音楽に合わせて踊ったりなどの打ち合わせをして、本番では一緒に作品を表現してもらいます。

学生の時に本当にいろいろなことを経験しました。学内では、教育実習、定期演奏会の準備、卒業論文、卒業試験、卒業演奏会。サークルオーケストラにも参加しました。学外では、東広島市内の病院で慰問コンサート、2か月に1度の地域の方と学生の交流の場を目的としたコンサートの企画、小料理屋やゴルフ場のカフェでのアルバイト、家庭教師・・・。本当に忙しい学生生活でした。でも精一杯忙しかった1つ1つの経験が今に繋がって必ず役に立っています。音楽の分野にとどまらず、知りたいことがあれば何でも調べることができる恵まれた環境の広大は、とりあえずやってみる、調べてみるのが好きな私にとっては最高の環境でした。